だが、余計なことは言わずに厚意は受け取っておく。

そんなこんなで、ファビオと私、ミモザさんに御者さん二人との王都への旅が始まる。

馬車が出立しても、公爵様らは私らの姿が見えなくなるまでずっと見送ってくれていた。




あれよこれよと、王都行きが決まり即出立することになってしまった。

これも、公爵様が私に王都行きを命じた……勧めたから、ではあるのだけど。



(……)



揺られる馬車の中で、向かいに座るファビオを一瞥する。

元はと言えば、私の王都行きは彼ーーファビオが言い出したことだ。

全然大丈夫じゃないとか、ローズマリー令嬢に存在を認識されてしまったとか、私を王都に連れ戻し警護を強化するとか。天下の公爵様に面と向かってはっきり話をするなんて。

それに、王都でのローズマリー令嬢と王太子様らの件も詳しく知っている様子。

公爵邸に属するただの庭師見習いの少年、だと思っていたのに。どうも様子が違うようだ。

ファビオ。……あなたはいったい何者?



「ファビオ、貴方はいったい何者ですか」