「ラヴィ」



公爵様とローズマリー令嬢の口論を呆然と見守っていた私の傍には、サルビア様がやってくる。侍女のミモザさんも一緒だ。

「サルビア様、これは……アルフォード様は!」

ここで何が起こったのか、本当のことをサルビア様に伝えようと思った。ローズマリー令嬢が述べたこととは違うこと、私が故意に危害を加えようとしたわけでないという弁解も含めて。

だが、話をする前に、サルビア様はうんうんと頷いて私の頬にそっと触れる。

「大丈夫よ、ラヴィ。わかってるわ?貴女が悪巧みをしていないことぐらい」

「サルビア様……!」

「まあ、むしろ、何かをしてくれるという期待はあったのだけど、ね?」

「へ?」

最後の言葉が理解出来なくて首を傾げるが、サルビア様は「まあ、期待通りよ?」と私の頭を撫でて誤魔化している。

いったい、何のことか。

「アルは……寝てるだけね?大丈夫ね」

先程は、私の名前を呼んでくれたアルフォード様。今は、倒れた姿そのまま目を閉じている。呼吸も落ち着いて寝息も聞こえる辺り、本当に寝ているのだろう。