妄想的にもほどがあるでしょ!



「あ、あのなぁ……」



ローズマリー令嬢の妄想演説を、さぞ聞き入っているだろうと思いきや……公爵様は、顔をピクピクと引き攣らせ、苦笑いをしていた。

隣にいるサルビア様は扇でお顔を隠しているが、同様の表情だ。



「ルビネスタ公爵!」

「あの、トルコバス侯爵令嬢。俺が聞きたかったことは、そんなことじゃない。息子に何があったとか、神殿の企み云々とかじゃない」

「え?」

「俺が聞きたかったのは……ローズマリー・トルコバス侯爵令嬢。何故、貴女がここにいるのか、ということなんだが」

「……え?」



ルビネスタ公爵様は、こほんとひとつ、咳払いをした。



「招待状を受け取っていない貴女が何故、この夜会にいるのか?……何故、この夜会の会場に入ることが出来たのか、なんだが」

「そ、それは!……そ、そう!アルに危機が迫っていると思って私、いてもたってもいられなくて!」

「危機が迫ってる?ほう?……会場の受付では『私は、アルと真実の愛で結ばれているんです、アルが私を待っているんです!なのに、アルは領地に監禁され引き離されて……』って、受付の者を泣き落としたらしいな?……アルを領地に監禁?引き離されて?って、アルを領地に連れてった俺、悪人?で、貴女のいう危機とやらはどこ行った?……おいおい!」

「!」