学園祭でのアゼリア様を思い出す。
アゼリア様は……逃げなかった。
学園の秩序が乱されようとも、婚約者が他の令嬢と仲睦まじくしていても。
目の前にアルフォード様の剣先を向けられても、逃げずにいた。
自分にとって大切なものを、自分の矜持や周りの人を守るために。
……私も、もう。逃げることはしない。
あの時のアゼリア様のように。
そんな決意を胸に、私は走る。
目的地に向かって駆け抜けながらも、私の頭の中にはいろいろなことが駆け巡っていた。
推察とか、考察とか。
…-もし、あの赤い虫と風、令息らにくっついていたてんとう虫が同じものなのなら。
アルフォード様の様子がガラリと変わったのも、ローズマリー令嬢から発されたあの赤い虫と風が原因なのなら。
あの王都での騒ぎも、ローズマリー令嬢が何らかの手立てで起こしたもの、と考えられる……?
王太子様やアルフォード様らを籠絡し、侍らせて奇行に走らせたのは、ローズマリー令嬢の意図なの……?!
その結論に達した時に、恐怖に加えて、私の中には……憤りの感情さえも生まれてくる。



