秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


「ラヴィ様?」

「ラヴィ、どうした?」

ファビオとミモザさんが不思議そうにこっちを見るが、私はうまく返答が出来なかった。



ーーダメだ。

アルフォード様を、ローズマリー令嬢から引き離さなければならない。



「……あ、おい!どこに行く?ラヴィ!」



ファビオが引き止めるのも聞かず、私はその場を駆け出す。

バタバタと階段を駆け降りて、庭師の宿舎を飛び出した。

「おーい、ラヴィ!」

「ラヴィ様!」



外へ飛び出しても、二人の声が聞こえてる。走る私の後を追ってきているのだろうか。

だけど、二人に説明するまでの余裕がない私は止まることは出来ない。

大好きな、大切な人を守りに行くために……一刻も早く行かねばならないのだ。



(アルフォード様っ……)



走って逃げてきた道を、また走って戻る。

先程、ローズマリー令嬢への恐怖から逃げてきたあの場所、夜会の会場へと戻るのだ。

……さっきは、気が動転して思わず逃げてしまったけど。

逃げてしまっては、大切なものを失う。そんなような気がして。