秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


ローズマリー・トルコバス侯爵令嬢に魅入られて傍を離れなかった王太子殿下や、アルフォード様。その他の令息たち。

王宮内に飛び交っていて、彼らに付着していたてんとう虫。

ローズマリー令嬢から発された赤い虫と風。

彼女が現れた途端、顔つきが変わって愛を叫んたアルフォード様。

……もしや、これらのことは一つに繋がっている?




ただ、ひとつ言えるのは。

嫌な予感がする……という、本能的に感じ取った危機だった。

再び、心臓がドクドクとうるさく鼓動を打つ。



ーーあれは、良くないものだ。



バルコニーで体を寄せ合う二人を前にして、危機を知らせる本能が、そう言っている。

ローズマリー令嬢から噴き出たあの赤い風から禍々しいものを感じ取った、ただそれだけ。……なのに。

根拠もなく、危険だと察する。

……そんな危険なものが、アルフォード様の傍にいる?



(それは、ダメだ……)



その事実に辿り着いた途端、背筋がゾワッとして焦燥感が込み上げてきた。

衝動的にバッと立ち上がる。二人の姿を窓越しで視界に入れたまま。