そうーーーあの時は、王宮には随分虫が多いな、ぐらいにしか思ってなかった。何故、てんとう虫だけこんなにいっぱいいるのだ、と。
ちらほらと視界に入る赤いてんとう虫が、王太子様や令息らの袖やら顔やら指やらに留まっているのがとてもとても気になって。
『ちょっとすみません』と断って、くっついていたてんとう虫を摘んで取り除いた。
熱を放つてんとう虫だったのか、触れた時は若干熱かった。
そして、てんとう虫はいつのまにかいなくなっていた。
しかし、先程はこの目で目撃したのだ。
あの赤い虫と似たようなものが、ローズマリー令嬢から発されていたのを。
……どういうこと?
王太子様や令息たちにくっついていたてんとう虫と、ローズマリー令嬢を取り巻く赤い風と虫が似ている。
同じなの?
この二つが関連しているのか、何なのか。
そして、この赤いてんとう虫は何?
ただの虫では、ない?
夜会の会場で誰もが無反応だったように、私以外の人はその姿を認識しない。
そして……ローズマリー令嬢が現れた途端にガラリと別人のように変わった、アルフォード様の顔つき。
まるで、何かに取り憑かれたかのような。



