ーー私はその表情、好きではない。
それにしても、疑問が残る。
何故、急に。ローズマリー令嬢はこのルビネスタ公爵領に、この夜会に現れたのか。
あの王都での騒ぎは、終焉した。
ローズマリー令嬢にあんなに熱を上げていた王太子殿下も側近の高位貴族令息らも、学園卒業が近付くにつれて、結局は婚約者の元へと戻っていったのだ。社交界では、若気の至りだったのでは?と済まされている。
……実は、私もこの件には一部関わっている。
エリシオン王太子殿下がアゼリア様に婚約破棄を突き付けると聞いて、いても立ってもいられず、侯爵令嬢であるマーガレットお姐さまの登城に付き添うフリをして王宮に忍び込み、見習い仲間と共に二人の話し合いの現場に乗り込んだことがあった。
これ以上、アゼリア様を悲しませたくはないという一心で、王太子様に直談判しようとしたのだ。……今考えたら、なんて恐ろしいことをしたとは思うが。
突然として二人のいるサロンに姿を現した私たち聖女見習いの六人に、王太子様もアゼリア様もびっくりしていた。
エリシオン王太子様は最初は怒っていたけども、最終的にはアゼリア様とは婚約を継続すると約束してくださった。
その約束までにはいろいろと何やかんやあったけれど。
……だなんて、その何やかんやな少し前の昔話を思い出す。



