想い慕う人と他の女性の逢瀬のショック。冷静になると、ちょっと頭にきて、心の中でぶつぶつと悪態をついてしまった。
愛は人を変える?からなのか、アルフォード様の顔つきまで変わってしまっている。
《俺の女神を傷つける醜女よ。この正義の刃で切り刻んでくれる……!》
……王都でお会いした時の、あの冷たい顔つきに。
ローズマリー令嬢を見つめる視線は熱を孕み、激情が込められているようだが……何とも冷たさを感じる。
まるで、心を無くしているような。そんな表情だ。
(違う……)
私の知っているアルフォード様の顔ではない。
初めてお会いした時、ここ数ヶ月、この公爵領で共に過ごしていたアルフォード様の柔らかい表情……ではない。
《……私は以前。騎士として、してはならない事をしてしまいました》
《私にはもう、剣を握る資格はありません……》
あの時、ラベンダー畑で過去の過ちを悔やんでいた苦しそうな表情でも、ない。
《あの時は確かにそれが正しいと信じて疑わなかった。自分は正義だと。……今、思えば、何故そんな風に考えていたかもわからない。現在、こんなにも後悔しているというのに》
私に、そう話したはずなのに。
《そして、今もわからないのです……自分自身が》
なのに……過ちを犯したあの時と、同じ顔つきになってますよ?アルフォード様。



