「じゃあ、公子様はトルコ風呂フェス真っ最中というわけだな。にひひ……」
「??」
何やらワケのわからないことを言っては一人で笑っているファビオを見ると、疑問だらけで首を傾げてしまう。
トルコブロじゃなく、トルコバスってさっきから言ってるのに。
ファビオはたまに私の知らない言葉を使う。平民の間では知られている言葉なのだろうか。ふぇすもこすぷれも。
「……成る程。あのピンク頭の令嬢が、件の侯爵令嬢ですか」
羽ペンをすらすらとメモ用紙に滑らせ、そう淡々と話すのはミモザさんだった。
「ほぅ。ミモザ、知ってんの?」
「ええ。一時期、王都を騒がせていた令嬢ですよ。王太子殿下や高位貴族令息らの寵愛を一心に受け……詳細は、公子様の名誉に関わることなので伏せますが」
ミモザさんも、王都での噂はご存知のようだ。アルフォード様の奇行のことも。
「へぇー。あの美貌なら、公子様に関わらず誰でも惚れ込んじゃうわな」
「……しかし、何故侯爵令嬢がこの夜会にいらっしゃるのか。今回の夜会は、北部の貴族とルビネスタ公爵家に縁のある中央貴族しか招待していないはずですが」



