何たって、ローズマリー令嬢を見つめるアルフォード様の熱のこもった視線。愛おしげに彼女を見つめ、優しく触れるその様子はもう……間違いないだろう。
アルフォード様は、ローズマリー令嬢を想っている。
(失恋だ……)
私の恋は、呆気なく散ったのだった。
だが、ずーんと落ち込む私をよそに、お隣にいる男は随分盛り上がっている。
「うおぉぉ!公子様がキス!キス!それに、公子様の女、顔美人ーの、胸でかーの、尻でかーの!イチャイチャ!イチャイチャしとるぅぅ!」
「ファビオ、うるさいですよ。……しかし、公子様。ホストとしての役目も果たさず、どこの馬の骨かわからない令嬢と接吻をして親密に過ごすなんて……これも、メモして奥様に報告です」
「……ローズマリー令嬢。ローズマリー・トルコバス侯爵令嬢」
「へ?」
ミモザさんの『どこの馬の骨かわからない』の疑問に答えるカタチで呟く。
だが、変な顔して聞き返したのはファビオだ。
「トルコ風呂令嬢?」
「トルコブロ?じゃなくて、バス。トルコバス。……アルフォード様のご学友の令嬢」
何故かファビオはブッと吹き出す。
そして「へぇ……?」と、呟いた。



