挨拶不要なんて、王太子殿下の手前許されるわけもないし、それに……この令嬢が言うことではない。
学園は身分関係ないだなんて、それはあくまでも学園内の生徒の間のことだけであって、私たちに適用されるわけがない。
しかも、神殿のことをさりげなく侮辱した。お祈りばっかでカーテシーを教わらない?なんて偏見だ。
頭を下げようとした私たちに、気を遣わないで?と優しく対応したかのような口調で、実はとんでもないことを言っている。
身分を違えど同じ人間?明らかに貶されている。……そんなあからさまな敵意に私たちが気付かないわけないだろう。
その証拠に、聖女見習い仲間の面々の表情は真っ青になって震えたり、強張っている子もいる。
気付かないのは、そんな発言をした彼女を優しいと言った背後の騎士団長の令息ぐらいだ。
この令息は、今の彼女の発言をちゃんと理解してるのだろうか。聖女のよう?耳は確かか。甘ったるい視線でローズマリー令嬢の顔しか見ていないようだから、無理もないのか。



