(嘘っ……)



私は……愕然としていた。

ほんのさっきまで、私に柔らかな笑みを向けてくれたアルフォード様が。

私がずっと想いを寄せて慕っていた、アルフォード様が。

ものの数分後には、美しい女性に情熱的に愛を騙り、公衆の面前でも構わず抱擁という行動を起こしている。

そして、彼女を見つめるアルフォード様の視線は甘く、熱を帯びていた。情熱を持って想い焦がれていると、見ている誰もが感じ取るだろう。

私の前では見せたことのないものだ。



ーー嫌だ。



嫌悪を自覚すると同時に、私はその場を背にし、逃げ出していた。

華やかな夜会会場を飛び出し、駆け抜ける。胸中に、いくつもの複雑な感情を抱えながら。



想い慕うアルフォード様が、他の令嬢と寄り添う姿に傷付いたのか。

いや、それと同じくらい……私は、突如現れたあの令嬢に恐怖と、違和感。そして、なぜか危機を感じていた。

何故、何故?

何故、王都にいたあの令嬢が、今ここで、アルフォード様の前に、このルビネスタ公爵領に現れたの?

そして……会場にいた人々は誰も気付いていなかった、彼女から発する禍々しい何かと赤い粒子の数々を伴った風。



あれはーー何?