「内田さんは私とこちらへ。」

 大きな部屋の端と端に分かれて、どんな会食よ……と顔をしかめた。

「すみません。
 ご令嬢だからと誰も彼女の行動を正すことが出来ずに……。
 優秀な兄がいるので、経営を継ぐのは彼女ではないのですが、それがまた彼女の自由奔放さに拍車をかけてしまっているかもしれません。」

 優秀な兄。
 自分にも身に覚えのある生い立ちにまたも彼女へ同情の気持ちが芽生えそうになって考えないように努めた。

 視線の先では美咲さんに詰め寄られて怪訝そうな顔をしながらも2人で話す彼の姿が視界に入った。

「失礼ですが、内田さんが高宮課長の恋人……なのですよね?」

「え、は、はい。」

 突然、込み入ったことを聞かれて思わず素直に返事をしてしまった。
 取引先に話していいことなのか、不安がよぎる。

「先日は失礼な物言い、すみませんでした。
 あなたも被害者とは知らずに完全な八つ当たりだ。」

 大津さんの言いたいことが分からなくて大津さんを見ると、目を細めて2人の方を見守る横顔に同僚以上の何かを読み取った。