ずんずん歩いていく彼がつかむ手を振り払った。

「藤花……。」

 急激な本気のキスをされて未だ赤い顔で睨んでも格好つかないことくらい分かってる。

 いつもは恋愛偏差値低めの私に合わせて触れるだけのキスから慣らしていたことも、実は本気のキスなんてしていなかったことも、今さら気付いてものすごく居た堪れない。

「接待はいいんですか?」

「いや。だから藤花を迎えに来た。
 大人の余裕を見せて、飲み会に送り出したいし、藤花の手を煩わせずに過去を清算したい。
 けど、ダメなんだ。
 ごめん。情けなくて。」

 うなだれる俊哉さんに一歩近づいて顔を覗き込む。

「私の方こそごめんなさい。
 素直になれなかったし、それに……。
 お子様の私に合わせてたなんて知らなかった。」

 手で自分の唇に触れて、その指が震える。