私は恐ろしさからベッドの上で正座をしてこうべを垂れた。

「弾糾したいわけじゃないんだが。
 そうも言っていられないのか?」

 弾糾したいわけじゃないって、それならこのピリピリした空気を和らげてください。

 思っていても口には出せない思いを飲み込んでただただ下を向く。
 溜息を吐かれて居た堪れない。

 けれど溜息を吐いた高宮課長は優しく諭すように言った。

「藤花。俺に話してくれる?」

 いつも怖い高宮課長とは違う優しい声色と、愛しそうに呼ぶ『藤花』呼びに弱い。

 私は力なく頷いて口を開いた。

「少し現実逃避をしたくて見ていただけで本当にここを出て行こうと思っているわけではないんです。」

「現実逃避……ね。
 藤花には現実逃避したいくらいここでの生活は辛くなった?」

 核心を突く質問をされて膝の上に置いていた手をギュッと握り締める。

「それは………。」