「お粥、食べれそうなら作って来ましょうか?」

「いや。いい。それより側にいて欲しい。」

 やっぱりやけにしおらしい。

「風邪を引いて心細くなっちゃいました?」

「いや、俺は常日頃、いつ藤花が俺の前からいなくなるのか不安で仕方ないよ。」

「俊哉、さん、、。」

「一緒に寝よう。
 昨日からマンションでも一緒に寝るはずだったのに、俺の馬鹿のせいで、、すごく、ショックだった。」

「喧嘩……中ですよね?」

「うん……休戦しない?
 寂しくて嫌いなんだ。病気になるの。
 熱に浮かされて変な夢を見るし。」

 病気のせいじゃないと言ってみたり、病気のせいにしてみたり。
 話す言葉は割とハッキリしているのに意識が朦朧としているのが分かる。

「本当に小学生みたい。」

「あぁ。小学生で構わないよ。」

 今にも眠りそうな俊哉さんの額に手を当てるとまだ熱い。
 気持ち良さそうに目を瞑った彼に「食事やお風呂を済ませたら来ます」とだけ言って部屋を出た。

 仕方ないなぁと思いつつ、心が弾んでいることに気付く。

 あんなに同じ部屋で過ごすことが恥ずかしいと思っていたのに、今は2人の間にある溝を飛び越えて私も側にいたかった。