「高宮課長!!
 ねぇ!俊哉さん!起きてください!!」

 私の声にやっと反応したのか、扉の向こうで体を引きずる音がした。
 扉を開けるとすぐ近くでうずくまる人影。

「俊哉さん!何をやってるんですか!!
 こんなところで風邪引きます!って、風邪引いてるじゃないですか。」

 肩で息をする高宮課長の体は熱い。

「ごめん。藤花。
 俺、肝心なところで無神経で。」

「今はそんなこといいからベッドへ行きましょう。
 肩、貸します。」

「ごめん。
 お願いだからご飯を一緒に食べよう。
 失うのは嫌だ。
 藤花がいない生活なんて嫌だ。」

 うなされるように口にする弱音。
 それはきっと前に裏切られて1人になる寂しさを知っているから。

 失いたくないのは、私だからじゃない。
 ただ、1人が怖いだけ。

 けれど弱っている彼にそんな本音は言えなかった。