「お世話になります。
 プラシデス社の高宮です。
 林田課長とお約束させていただいているのですが。」

「はい。2番ブースでお待ち下さい。」

 初めての社外での仕事。
 すごく緊張するけれど、側に高宮課長が居てくれるだけで全然違う。

 きっと一昨日までの高宮課長とでは、そうは思えなかった。
 2人のことを公にしようと言ってくれた彼に2人の仲を前向きに進めようとしてくれる彼に感謝の気持ちでいっぱいになる。

 そんな感慨深い気持ちでこっそり隣の高宮課長の顔は観察できないから、指先を見つめていた私の視界にとんでもないものが飛び込んできた。

 視界、というよりも耳への方が正しいだろうか。

「ハッピーバースデー!俊哉!!」

 嘘……でしょ。

 隣で頭を抱える高宮課長と楽しそうな目の前の女性を見比べる。
 女性の声は聞き覚えがあって否が応でも蘇る記憶。

「ちょっと!北村さん!
 ダメですよ。公私混同したら。」

 慌てて追いかけて来た男性に叱られて「あはは。まぁまぁ俊哉の誕生日だったんだから大目に見て」と悪びれない様子で彼女は笑う。

 ふわふわした柔らかそうな髪の毛が可愛らしい彼女によく似合っていた。
 天真爛漫という言葉がよく似合う……。

 彼女が首から下げていた社員証を見なくても答えは分かってしまった。

『北村美咲』