「もしかして昔、犬を飼っていた、とか。」

「………はい。すごく可愛くて。」

「そう。重ねちゃったんだな。」

 優しく背中を撫でてくれるぬくもりに止まっていた涙が再び流れた。

 昔、飼っていたテディ。
 テディベアみたいにモコモコで可愛い犬だった。

 テストの点数が悪くて落ち込んだ時も、友達と喧嘩した時も、お母さんに怒られた時も。
 いつもいつも私の側にいてくれた。

 映画では愛犬との別れが描かれていて、それがテディと重なった。
 ずっと離れないって決めていたのに、人生って無情だ。

 犬の方が寿命が短いのだから仕方ない。
 そう言ってしまえばそれまでなんだけど。

「俺は……どこへも行かないから。」

 何も聞かずに抱き締めてくれていた俊哉さんの優しい言葉に、涙は決壊して何度も頷いては彼にしがみつくように泣いた。