ちょっと前までは泣く子も黙ると言われていたとか、いないとか。
 鬼上司との呼び声も高かった高宮課長。

 笑わない男とまで言われていたのに、私と付き合うことになって会社でも雰囲気が柔らかくなった。らしい。

 だって会社での私への冷たい対応は変わらないんだもの。

「内田は目を開けて居眠りが出来るのか。」

 こんな辛辣な指摘をされることも変わらない。
 本当に恋人なのか分からないくらい。

「周りが高宮課長に色めき立ってることが面白くないなら公表すればいいじゃない。
 私達、付き合ってますって。」

「そういうわけじゃ………。」

 確かに前から人気があった高宮課長が前以上に女性から誘われているところを目の当たりにしていい気はしない。

 だからって公表なんて出来ない。

「高宮課長の恋人が私だなって、なんだか申し訳ないし。」

「何を言ってるの!しっかりしてよ〜。」

「うん……。ごめん。
 なんか今、気持ちが落ちてて。」