赤面しそうな顔をもう一方の手で押さえていると隣で不穏な動きをする気配を感じた。
「実はさ、ここ。
カップルシートなんだよね。」
「はぁ。」
普通の席と変わらない気がする……と思っていたのはほんの数秒。
カップルシートの意味をすぐ知ることになった。
彼は私と手を繋いでいない方の手で私と彼との間にあった肘掛けをあげた。
そしていつの間にか繋いだ手を離して、その手はあろうことか私の腰にまわして彼の方へ引き寄せられた。
「……ッッ。あ、あの。ちょっとこれは。」
「俺、イチャつきながら映画見てる奴を見ると、ど突きたくなってたんだけど。」
にっこり微笑んだ彼を見て嫌な予感しかしない。
あんなに望んでいた彼の微笑みも、なんだか怖く思える。

