「それがショッピングモールを造る側の会社に入って、その会社の人と結婚するっちゃー、あの日、忘れてきたんは今日のこの日を表しとったんかなぁ。」

「もう。そんなこと言っても子どもはショッピングモールに忘れちゃダメなのは忘れちゃダメなんだからね。」

 いくら憎まれ口をきいても涙が溢れて止まらない。

「背すじをしゃんとしんしゃい。」

「もう。お父さんのせいじゃない。」

 涙は止まらないけれど背すじを伸ばす。
 ほとんど私と背が変わらなくなってしまったお父さんも背すじを伸ばした。

 目の前の扉が開いて、まぶしい光の中へお父さんの腕に手をかけて歩み始めた。

 真っ直ぐに伸びるバージンロード。
 光の中に俊哉さんは立っていた。

 そこまでたどり着くと「俊哉くん。藤花は可愛い娘じゃで。藤花を頼むよ」と私を引き渡した。
 その姿を見てむせび泣く私の背中を優しくさすってくれる。

 その彼をベール越しに見つめ、小さく頷くと手を取って、一歩また一歩と歩いた。

 これからの2人の生活を表しているようだった。