願望がそのまま目の前に現れるってどれだけ酔えば気が済むのかと、心を無にすることに努めてドアを押し開けた。

 再びドアを閉めて「嘘、だろ」と呟いて息を吐くと今度こそ決意する。

 ドアを静かに開けて玄関へと入り、ドアの開け閉め選手権があれば優勝できそうな世界最速のスピードでドアを閉めた。

 顔を見合わせずにソファで寝てしまおうと思っていた計画は脆くも崩れ去った。

 とろんとした目つきの藤花が玄関で待っていたのだ。

「もぉ何度もドアを開けたりー閉めたりー。
 ハハッ。おっかしいー。」

 まずい。こっちもあっちも酔っている。

「お帰りのチュー。」

 両手を広げて可愛い唇を突き出す藤花に箍なんてとっくに吹き飛んでいる。

 よろめいて、反省したはずの深いキスをすぐにでもしてしまいたくて、藤花の唇に噛み付いた。

 酔っているせいなのか、藤花もそれに応えるように舌を絡めてきて思わぬ反撃にあう。

 こんなの止めれるわけない。