肩を押して彼の行動から逃げようとしても顔を上げた彼にとらわれて唇を重ねられた。

「んっ!もう!俊哉さん酔ってますよね?」

「阿呆。酔ってない。
 人を酔ってないと行動出来ない奴みたいに言うな。」

 そんなこと言ってないじゃない。
 だって、ここ、外ですよ?

 若干、不貞腐れてしまった彼に手を引かれマンションまでの道のりを歩いた。
 少し前は同じマンションに帰ることは気が重たかったのに、今はそれが嬉しかった。

「俊哉さん。
 仕事にのめり込み過ぎないでください。」

「……風邪ひいて迷惑かけたな。」

「それはもちろんそうなんですけど。」

「そんなに迷惑だった?」

 悪そうにする彼に一応訂正する。

「迷惑というか、お体を大切にしてくださいという意味です。」

「あぁ。うん。ありがとう。藤花もな。」

 温かい言葉に胸も温かくなる。

「その、それだけじゃなくてですね。」

「ん?」

「時間が許す限り、一緒にいたいです。」

 無言になった彼にドキドキしていると低くて甘い声がした。

「あぁ。俺も。」