久しぶりに見られたキッチンに立つ高宮課長……もとい俊哉さん。

 上司と部下という関係から恋人になって、私は彼にお願いした。
 会社では高宮課長と内田という関係でいて欲しいと。

 それならば2人でいる時は恋人らしくして欲しい。
 そう言われ、藤花と俊哉さんと呼び合うことになった。

 実際には一緒に住んでいても忙しい彼とは家で顔を合わせることはほぼなく、高宮課長側の彼としか会えていなかった。

 キッチンからはいい匂いがしてきてお腹がグーッと音を立てた。

 もう。現金なんだから。

 彼に聞こえていないだろうかと戦々恐々としながら率先して作ってくれる彼の傍らで箸や食器などの準備をした。