だけど、ここでまだ彼の魅力にハマるわけでもなく。

ようやく到着した保健室。

ノックも無くそのドアを開けると、先生はいなくて。



「え、あれ…いねぇじゃん」

「まぁ…絆創膏だけもらっとくよ」

「うん…あ、じゃあちょっと待ってて」



私が薬品棚に近寄ろうとすると、その前に矢島くんがそう言って、「白崎さんは座ってて」とあたしを椅子に座らせる。

ほんの少しの間待っていると、矢島くんは薬品棚から絆創膏やら消毒液やらガーゼやらを持ってきて、あたしの前に座って言った。



「消毒してあげる」

「え、いいよ自分でやるからっ」

「いいのいいの。ほら、こうやって時間潰すのすげー大事」

「…」



…なんだ、そういうことか。

どうやら彼は部活が怠くて、わざとこうやって時間を潰そうとしているらしい。

だけど。



「…あ、待って。その前に傷口洗ったほうがいいんだっけ」

「そだね。でもいいんじゃない?私は平気だよ」

「や、それダメだろ!ばい菌入る!」

「!」



彼は、意外と真面目なところもあるのか。

私がそう言うと、頑なにそう言って、廊下に繋がるドアとは真逆のドア。

外に繋がる方のドアを開けて、一旦私に足を軽く洗わせた。

この保健室内にはドアが二つあって、外に繋がる方の入り口を出たところには、すぐ傍に水道が備えられている。