「犬っころめ、来たか。」

「お疲れ様です、比嘉特捜部長。」

丁寧に挨拶する俺を"犬っころ"と呼ぶ巨体の男性。
彼がさっきの電話の相手で俺の上司だ。
そして彼女レナの父親でもあるが、全くと言っていい程似ていなく、スキンヘッドに濃い眉が特徴的なイカつい人だ。三白眼の鋭い目の合図で俺を近くに呼んだ。

「難波、紹介するよ。彼が噂の青山遥斗君だ。」

「あぁ!変わった能力を持ってるってゆう…。
警察ってゆうより、モデルみたいだな。」

隣にいたガタイの良い男性が、
顎鬚を触りながら俺を上から下まで、
細い目で見てくる。

180身長がある俺から見ても、2人はガタイの良さで自分よりも大きく見える。
さすがは上層部の人間だ。貫禄が違うんだ。

「青山です、三ヶ月前から部長にお世話になってます。宜しくお願いします。」

まだまだ半人前の俺は、難波と呼ばれる人に挨拶すると、緊張感はすぐに見破られた。

「俺はガタイは良いが、堅苦しいのは嫌いだぜ。
難波 一徹(ナンバ イッテツ)だ。本部から特捜部に移動して来た。よろしくな!」

さり気なくユーモア?を取り入れた紹介に、少し緊張感がほぐれた俺も宜しく伝えると、
比嘉特捜部長と目が合った。

「あの、それで遺体なんですけど…」

「あぁ。不審死とゆう理由はな…」

そう言いながら特捜部長がブルーシートのチャックを開けた。ゴクリ…と息を飲むと、温度のない目を閉じた男性の顔が見えてきた。

「……っっ!」

「背中を刺殺されていたんだが、
凶器が何かサッパリだ。」

この三ヶ月、何度か遺体は見てきたが、
その度に胸がぎゅっと締め付けられる感覚に襲われる…。

「被害者の名は、明部鉄郎49。
持ち物からフリーカメラマンだと判明している。
紫陽花の花壇に埋もれていた所を、
ゴミ捨てに出た近所の住人が発見した。」

比嘉特捜部長が、遺体に手を合わせて言った。

「傷痕は刃物のような真っ直ぐな切り口でない。
だから、お前を呼んだんだ。」

「毒物検査、してみた方がいいですよ。」

「「!?」」

難波さんの言葉に遮るように、俺は言った。