第二話

 伊織が胡桃に手を挙げた事件で、彼は一週間の謹慎処分を言い渡された。
まともに食事を取ることもなく、ただ部屋の壁に寄りかかるようにして辛く苦しそうな顔をしていた。

「伊織の好きなチョコレートアイス買ってきたよ。これ食べて元気だしなよ」
「……ごめん、いらない」
「昨日のことで結構疲れたんだね……俺もちょっと疲れた。あの女のことどう思う?」
「……酷い子だなって。あんなこと、言われると思わなくて」
「伊織も、傷ついたよな……あの子のこと、どうしたい?」

 質問をかければ、彼からの返答はゆっくりと返ってきた。
普段はチョコレートアイスに目のない伊織がそれにすら口をつけないのはおかしいと考えた光樹。
しかし最後の問いには顔を一度だけ上げて、そのまま暗い声色で返事をした。

「仲直り、したい」
「は? お前何を馬鹿なことを言ってんの? 仲直りってことは、許さなきゃいけないよ」
「うん……仲直りする。仲直りしたい……でも、だけど。あの子に言われた言葉を思い返すと、心の中がしんどくて、辛くて、死にたくなる」
「なんて言われたんだ?」
「光樹と小町が居なくなればいい、いらないって……。それとも自分が俺の親みたいに死ねばいいのかって」