「止めたくもない。もう、良い」
「何がいいの? しっかり言ってよぉ」
「それくらい、自分の胸に手を当てて考えてみれば? 好きにすればいいよ」
半ば自棄になってしまっているのだろう。色を含まない静かな声で言葉を放った彼は胡桃から視線を逸らした。
絶対的に自分には逆らわず言うことを聞いてくれて、自身のことを好きでたまらない。別れる選択肢などあるはずがないと考えていただけに、胡桃は焦りを覚えた。
焦りと不安が合わさって、苛立ちに変わる。彼女は伊織へと声を荒らげた。
「そう、止めないのね! 胡桃が他の人とデートしてもいいの? 辛くないの?」
「ああ、うん。辛くなんてないかもね」
本気で好きになった男からの返答には愛が全く感じられず、胡桃は頭の中が真っ白になる。
今まで自分に振り回されても無理難題を吹っかけられようとも健気だったあの伊織からの冷めた言葉に倒れそうになる。
徐々に頭に血が上り拳をギュッと握り締めたままで胡桃は責め立てる。
「わかってる、そうだよね! 胡桃なんかより光樹くんと小町ちゃんの方が好きだもんね!」
「は、急に何それ? 光樹はいとこ。小町も俺の幼馴染だよ。 だけど、いつ俺がそんなこと言った?」
「わがまま女の胡桃より光樹くんと小町ちゃんの方がいいんでしょ! 言わなくたってわかるもん……わかるんだもん!」
伊織には同い年のいとこの光樹がいる。そして一つ後輩の宗片小町という仲の良い幼馴染の女生徒もいた。
その二人のことを口に出された途端、伊織は俯いた。
自分の言っている言葉を信じては貰えず、挙句の果てにこの物言いだ。流石の彼も堪忍袋の緒が切れたらしい。
「わかるわかるって、言わなくても分かるとかお前は神様かよ! 俺の……光樹と小町の気持ち、どうして勝手に決めるの?」
「だって光樹くんは私のこと毛嫌いしてて冷たくてすぐ怒るし……小町ちゃんだって、何考えてるかわからないし!」
「それは胡桃ちゃんの普段の行いが悪いから……光樹のことも、小町のことも、悪く言うなよ」
「胡桃と別れる話より、二人の方が大事みたいだね。あんな二人の方が大事なの? 胡桃の方が伊織くんのことわかってあげられるのに?」
「何がいいの? しっかり言ってよぉ」
「それくらい、自分の胸に手を当てて考えてみれば? 好きにすればいいよ」
半ば自棄になってしまっているのだろう。色を含まない静かな声で言葉を放った彼は胡桃から視線を逸らした。
絶対的に自分には逆らわず言うことを聞いてくれて、自身のことを好きでたまらない。別れる選択肢などあるはずがないと考えていただけに、胡桃は焦りを覚えた。
焦りと不安が合わさって、苛立ちに変わる。彼女は伊織へと声を荒らげた。
「そう、止めないのね! 胡桃が他の人とデートしてもいいの? 辛くないの?」
「ああ、うん。辛くなんてないかもね」
本気で好きになった男からの返答には愛が全く感じられず、胡桃は頭の中が真っ白になる。
今まで自分に振り回されても無理難題を吹っかけられようとも健気だったあの伊織からの冷めた言葉に倒れそうになる。
徐々に頭に血が上り拳をギュッと握り締めたままで胡桃は責め立てる。
「わかってる、そうだよね! 胡桃なんかより光樹くんと小町ちゃんの方が好きだもんね!」
「は、急に何それ? 光樹はいとこ。小町も俺の幼馴染だよ。 だけど、いつ俺がそんなこと言った?」
「わがまま女の胡桃より光樹くんと小町ちゃんの方がいいんでしょ! 言わなくたってわかるもん……わかるんだもん!」
伊織には同い年のいとこの光樹がいる。そして一つ後輩の宗片小町という仲の良い幼馴染の女生徒もいた。
その二人のことを口に出された途端、伊織は俯いた。
自分の言っている言葉を信じては貰えず、挙句の果てにこの物言いだ。流石の彼も堪忍袋の緒が切れたらしい。
「わかるわかるって、言わなくても分かるとかお前は神様かよ! 俺の……光樹と小町の気持ち、どうして勝手に決めるの?」
「だって光樹くんは私のこと毛嫌いしてて冷たくてすぐ怒るし……小町ちゃんだって、何考えてるかわからないし!」
「それは胡桃ちゃんの普段の行いが悪いから……光樹のことも、小町のことも、悪く言うなよ」
「胡桃と別れる話より、二人の方が大事みたいだね。あんな二人の方が大事なの? 胡桃の方が伊織くんのことわかってあげられるのに?」
