思い出す。帰りの電車に揺られながら、神月くんの言葉を。



“どうしても知りたいのなら。この町に散りばめられた嘘を、探すといいよ”



あの言葉の意味は一体……?




その日の夜珍しく辞書を開いた。最後に引いたのは中学生の頃だっただろうか? 必死に勉強やテストについていこうとして――途中から崩れ落ちるように、無駄だと思うようになった。



国語辞典をぺらぺらと指で繰る。別に答えなんて期待してもないし何もないけど、何かヒントがあるんじゃないかと思って。


さらさらと流れてゆく言葉の海。


「……」


はらはらと散る言葉。どれも響くことなく通り過ぎてゆくだけ、季節と日常と同じ。