クリスタル王女様は、大広間の中央に立ち、辺りをゆっくりと見渡す。

俺たち対策本部のメンバーをじっと見つめた後、クリスタル王女様は口を開いた。

「本日は、お忙しい中ここに集まっていただき、ありがとうございます。今日ようやく皆様が待ちわびていた平和が訪れました」

クリスタル王女様のことは、ジャックが逮捕されたというニュースとともに新聞に掲載された。クリスタル王女様に一度会ったことがあるレムは驚き、ドリス国でもちょっとした騒ぎになった。きっとタンバリー国での反応はもっと大きかったのだろう。

今、クリスタル王女様は影の王女様ではなく光の王女様となっている。国民から興味と関心を集め、クリスタル王女様が望む民と貴族が手を取り合う世界を作ろうとしている。

俺たちは、もう関わることは永遠にない。もう見つめることしかできないのだ。

俺のこの想いは、胸にしまっておこう。思い出すときっと痛い。けれど、クリスタル王女様が幸せな世界を作っていくのなら、こんな痛みはすぐに消えるはずだ。