「ジャック、私はたしかに影の王女です。愛されず、親からも遠ざけられ、意思のないまま生きてきました。……しかし、リリー・オクトを名乗った瞬間から、私は生まれ変わったのです。次は、自分を生きていきます」

その話をしている時、リリーはちらりと俺を見た気がする。

リリーの長かった髪は、短く不揃いになってしまっている。それでも、勇気ある行動を取ったリリーを抱きしめたかった。

ジャックが連行され、貴族が俺たちに頭を下げて出て行く。ライナがリリーの手を引いた。

「皆さん、ありがとう。騙してしまってごめんなさい。……さようなら」

扉が、静かに閉じた。