「ふふっ、宏って強がりさんなんだね」
「……何言ってんの?」
途端に宏の声が不機嫌なものに変わる。
これは図星で怒っているのだろう。
「今の宏、可愛い」
すっかり忘れていたけど、私の知っている宏は甘えたがりで可愛いところもたくさんある幼なじみだったのだ。
本来ならばこれが本当の宏、のはずなのに。
「可愛い、か……」
「宏?」
「美羽、それ以上可愛いって言ったら今ここで美羽にキスするから」
「えっ……!?」
突然のキスという言葉に驚き、思わず大きな声を上げてしまう。
だから慌てて自分の手で口元を覆った。
危なかった……というか、もうすでに遅かった。
ここが電車の中だということを、私はすっかり忘れていた。
ただでさえこの状況で目立っていた私たちなのに、周りにいる人たち全員の視線が集まってしまう。



