「宏の、嘘つき……」
「そうなっちゃうね。でも美羽が悪い」
「私のせいにするなんてずるい」
宏は本当に離してくれないようで、少し落ち着いたはずなのにまたドキドキし始める。
「ほら、そんな顔で言われても説得力ない。
嫌なら怒るべきだけどな」
怒る……って言われても、怒ってるわけではない。
ただドキドキして、恥ずかしくて離してほしいだけなのだ。
「嫌じゃ、ないから……でも、恥ずかしくて」
「電車だから恥ずかしい?」
「それもあるけど、宏と距離が近いとドキドキして耐えられない……これ、さっきも言ったよ宏……」
同じことを二度も言わせる宏。
その上離す気もないだなんて、私はどうすればいいの?
「美羽が可愛すぎて意地悪したくなる」
そんな私を見て、宏は楽しそうに笑っていた。
宏の意地悪。こんな宏、私は知らない。



