「宏、お願い……もう無理だよ」
恥ずかしくて耐えられない。
電車の中だということよりも、周りの視線よりも、この密着状態に。
「何が無理なの?
ちゃんと言葉にしないと伝わらない」
宏の声はどこか楽しげ。
絶対わかってる気がする。
だけど言わないと離してくれない様子。
「恥ずかしいの」
「恥ずかしい?」
「宏にこうされるの、ドキドキして耐えられない」
宏の方を見上げれば、彼は満足そうに笑い私の頭をそっと撫でた。
「よく言えました。
やっぱり美羽は素直でいい子だ」
いつもと立場が逆転しているのに、少し違和感は感じるけど、こうして甘やかされるのは嫌じゃなかった。
「美羽、そんな顔したら余計離したくなくなるよ?
せっかく離してあげようと思ったのに」
そう言って宏は、ぎゅっと腰にまわす手の力を強めてしまう。



