「ひ、宏……!」
「何?」
宏はどうしてそんなに平然としてるの?
だって今の状況って、周りから見れば抱きしめられてるように見える、よね?
「腰に手が……」
「だって美羽、危なっかしいから」
「そ、そんなことない……恥ずかしいよ」
さっきからチラチラと視線を感じ、恥ずかしさが倍増する。
ドキドキと、また鼓動が早くなり始めた。
「変な美羽。
今までならこんなこと平気だったのに」
「……っ」
確かに宏の言う通りだ。
今は私が変なのだ。
前まではこんなことされても全然平気だったし、注意だってできたのに……今はただ、焦って恥ずかしがることしかできないだなんて。
「宏……ここ、電車」
「うん」
「周りも見てる」
「そうだね」
宏は相槌を打って、嬉しそうに笑うだけで離す気配はない。



