ーーー今日はいつもより早く家を出ることができた。
だから一本早い電車に乗れたのだけど、人は多く座ることはできなかった。
「美羽、転ばないように気をつけて」
電車の中はいつもより人が少ないというのに、今日はやけに私の心配をする宏。
そもそもこんなこと初めて言われた。
「心配しなくても大丈夫だよ?」
「ダメ、よく美羽バランス崩してるよね」
「そ、れは……そうだけど」
体幹のない私は、電車が大きく揺れると体がふらつくことが多々あった。
「だから俺のシャツに掴まって」
「でもシワになっちゃうよ?」
「美羽は俺にたくさん甘えていいから」
宏はそう言って私の腰に手をまわし、グッと引き寄せる。
それによってバランスが崩した私は、宏の方へと倒れ込んでしまった。



