「なんで?」
「早く学校、行きたいから……」
「その前に美羽に話がある」
宏は少し腰を上げ、私の腕を引く。
無理矢理座らされ、肩が触れ合うほど近くに宏がいた。
「話って何……?」
少し離れようと思い、反対側に移動しようとした途端に宏の手が腰にまわされる。
完全に固定され、結局動けなくなってしまった。
「どうして離れようとするの?」
「ち、近いから」
「ひどいね、今までは平気だったのに」
そりゃそうだ。
昨日までの宏はただの甘えたがりだったから。
「宏、話あるなら早く言って」
「……青谷」
思わずドキッとした。
青谷くんの名前がいきなり出されたからだ。
そういえば、今宏から青谷くんの名前を告げられるまですっかり頭から抜け落ちていた。
それほど宏の変わりように驚いていたってことなのだけど。



