「ううん、寝ない」
だから私は首を横に振るけど、中々宏から離れることができない。
体がいうことをきいてくれないのだ。
頭ではわかっていながら、やっぱり離れたくなくてぎゅっと抱きつき、反対のことをしてしまう。
そんな私を見た宏が、小さく笑った。
「美羽、可愛い。
意外と頑固でツンデレなんだ?」
どうやら宏にはすべてお見通しのようで、私をそっと包むように抱きしめ返してくれた。
「どっちも違うもん……宏が悪い」
「俺のせい?」
「うん、全部宏のせい」
宏がいきなり変わってしまうから。
昨日は怖かったけど、今日は優しくて甘やかしてくれる。
「そっか、俺のせいね。
じゃあ美羽、好きなだけこうしてていいよ」
いつもと立場が逆転してしまったことに気付きながらも、少しの間宏から離れることはできなかった。



