だけど宏はそれ以上何も言わなくて、力が抜けた私を抱き寄せる。
ぎゅっと、少し苦しいくらい抱きしめられた。
この抱きしめられる感じは、今までと変わらない。
これだけが同じだった。
一気に安心感が広がる。
思わずぎゅっとしがみつく私に対して、宏は何も言わない。
それどころか頭を優しく撫でられた。
その手つきは先程と違って温かい。
ねぇ、宏。
今この瞬間の宏も、今までと違うの?
そう思ったら悲しくなって、だけど何も言えなくて。
ただ抱きしめられていた。
ただ身を任せていた。
そしたらじわじわと疲れがやってきた。
あまりの展開に頭が追いつかなくて、体もついていかなくて疲れてしまったんだと思う。
そしてついには眠気が私を襲い……気づけば意識を手放していた私。
次に目が覚めた時は、ソファではなく自分の部屋のベッドで寝ていて。
もうそこに、宏の姿はなかった。