「泣かないで、美羽」
「嫌い…大嫌い…」
こんな宏、宏じゃない。
「こんな俺は嫌？」
「嫌い、宏じゃない」
「じゃあ俺はまた、自分を作らないといけない？」
「えっ…？」
涙で視界が歪む中で見える、宏の表情。
苦しそうだった。
「またいつもみたいに美羽がいないと何もできない甘えたがりの俺になればいいのか？
そしたら美羽はそれで満足なのかよ？」
口調がきつくなる。
じゃあこれが、本当の宏なの…？
「もう無理なんだよ、美羽が…お前が俺のことを幼なじみとしてしか見ないなんて」
宏が私の涙を拭う。
そしてまた、強引に唇を塞いできた。
そんなこと言われても、私だってわからない。
宏のこと、誰よりもわかってたつもりなのに。
