「……桜」
「あのね、私の知ってる宏がいるみたいで怖いの」
「桜、落ち着いて」
肩に手を置かれて、はっと我に返る。
「さっき見た柊が、多分本当の姿で合ってる」
青谷くんはためらいがちにそう言った。
その瞬間、頭の中が真っ白になる。
否定してほしかった。
ただ宏が怒っていただけだって。
「元々あいつは、桜にだけ優しい。
それは知ってるよな?」
うん、知ってる。
普段はクールな宏は、私の前になると甘えん坊に変わる。
「だけど、桜がいないとあいつ人が変わるんだ。
なんていうか、さっきみたいに言い方もきつくなるし、色々冷たいっていうのかな……って、桜!?なんで泣いて……」
青谷くんの言葉を一つ一つ聞きながら、気づけば目から涙がこぼれ落ちていた。



