この声、知ってる。
だって私のよく聞く声だったから。
『相変わらず、可愛すぎだろ』
『まじで起きねぇよな、いつか襲うぞ』
きつい口調で、いつもよりずっと低い宏の声だ。
「桜?そんなところに止まってどうし…」
「黙ってないで早く話せよ」
青谷くんに名前を呼ばれ、肩が震えたけれど、彼にも宏の声が聞こえたようで私の隣で止まった。
もしかしたら、宏じゃないかもしれない。
それなら確認せずにその場から逃げればよかったのに。
その声の主が誰なのか、確かめたくなって。
私は壁に手をつけて、そっと顔を覗かせてしまった。
「……っ」
宏だった。
初めて見る、ひどく冷たい表情。
怖かった。
私の視界には、体育館裏の壁に迫られた女の子三人と、その子達を睨むように見つめている宏の姿が映った。



