「あっ、桜笑っただろ」
「ご、ごめんね……面白くて」
「桜は文句言わずにやってて偉いなぁ」
「何言ってるんですか、俺も言ってませんから!」
「ブツブツ文句言ってるだろー」
「それが俺への扱いなんですね、くそー」
青谷くんは口ではそう言いながらも、手はちゃんと動かしている。
きっと場を温めてくれているのだ。
「じゃあ終わったら、道具は倉庫に直しといてくれ。よろしく」
「先生も手伝ってくださいよ」
「俺はランチタイムがあるから悪いな」
「うわっ、先生逃げた」
青谷くんの言う通り、先生は私たちに背中を向けて校舎の方へと歩き出してしまった。
「最悪だな、あの先生」
「でも、朝から準備で忙しそうだったよね」
「桜って人がよすぎる。
もっとわーわー言っていいんだぞ?俺みたいに」
青谷くんみたいに……私が言ったら本気と捉えられそうで無理だ。
青谷くんが言うからこそ、冗談に聞こえて場が和むのだ。



