「これ以上はダメ」
「……どうして?」
さっきは宏から強引にキスしようとしてきたのに、私から求めたらしてくれない。
やっぱり意地悪だ。
「美羽が可愛すぎるから」
「絶対嘘だ」
宏は私を遊んでいるんだ。
私の反応を見て、楽しんでいる。
一体宏は、今何を思っているの?
「ねぇ、宏」
「なに」
「宏は今、なにを考えてる?」
少しでも知りたくなった。
幼なじみ、だったのに、どうして私を恋人にしたのか。
ちゃんとした理由は聞けていない。
それとも本当に、私が恋愛しないように付き合っているだけなの?
そうだとしたら、やっぱり胸が苦しくなる。
「美羽が可愛いって思ってる」
「それだけ?」
「……他に何て言ってほしいの?」
他に……他に、私は何て言ってほしいんだろう。
自分でもうまく言葉にできなくて、困惑してしまう。
「わからない」
「……今日の美羽、少し変だね」
「うん、変なの」
とにかく自分の気持ちがわからなかったけれど、宏にぎゅっと抱きしめ返す。
「なに、可愛いことして」
「離れたくない」
「もー、そんな可愛いことばっか言わないの」
宏が私の頭を撫でる。
優しい手つきに私の好きな撫で方で。
そんな宏に身を任せ、そっと目を閉じる。
その間もドキドキは止まらなくて、さらには悪化するばかりだった。