「た、食べたら喉乾いた!自販機探そう!」
「あっ、逃げた」
「逃げてないもん」
「ほら、危ないから俺から離れない」
宏は先を行こうとする私の手を掴んだ。
「今日の宏、意地悪」
「美羽が可愛いから悪い」
ほら、またそういうことを言う。
さらっと言えるあたり、本心じゃないんだろうな。
宏なら他の女の子にも簡単に言っちゃいそう。
そう思うと、なんだか胸が苦しくなる。
おかしいな、宏のことを考えるとこんなに苦しくなるだなんて。
「美羽、どうしたの?」
「う、ううん……なんでもない!私、りんごジュースが飲みたい!」
「りんごジュースね、じゃあ自販機探そう」
宏は文句を言うことなく、楽しそうに笑って私についてきてくれた。



