こうして宏が私の部屋にやってくる時に起きているのは初めてで、なんだかドキドキしてきた。
もちろん寝ているフリだから、変に動くことは許されない。
なるべく動かないように固まっていると、近くで人の気配を感じた。
きっとすぐそばまで、宏が来ているのだ。
「……相変わらず、可愛すぎだろ」
だけど宏の声が耳に届いた瞬間、頭の中が真っ白になってしまった。
それはなぜか。
確かに宏の声だったけれど……宏じゃなかったからだ。
声がいつもよりずっと低く、また柔らかい話し方じゃなかった。
朝、だから?
独り言、だから?
ドクドクと、脈打つ音が速くなる。
「まじで起きねぇよな、いつか襲うぞ」
ほら、やっぱり違う。
なんというか、どちらかと言えば私の苦手なきつい口調で。
本当に、今そばにいるのは宏なのか、確かめたくなるほど。