「もう、怒ってない?」


恐る恐る聞いてみると、宏はふっと小さく笑った。


「怒ってないよ。
美羽泣かせてごめんね」

最初の言葉で十分だった。
謝罪の言葉なんていらない。


ぎゅっと宏に抱きつく。
これでもかってくらい。

「美羽が甘えるなんて珍しい」
「宏がいなかったら私、嫌だよ……」


それは今日わかったこと。
宏を怒らせて、一人だった時は本当に胸が苦しくてずっと泣きそうだった。


だけど宏がそばにいてくれたら、こうやって笑顔になれる。
嬉しい気持ちになれる。


私の中で、宏の存在はそれぐらい大きかった。


「そっか。
じゃあその日も俺が行かないとダメだね」

「その日?」
「ダブルデート、するんでしょ?」

「えっ……いいの?」
「俺が行かないと美羽、他の男になびくから」


仕方ない、と続けて宏は私の頭を撫でる。