『知らない』
それだけ言い残し、宏は私を置いて先に行ってしまった。
「宏……!」
慌てて宏を追いかけて隣に行くけれど、彼は私の方を一切見てくれないし反応すら示してくれない。
本当に知らない者扱いされている。
宏に、嫌われた。
途端に泣きそうな気持ちでいっぱいになる。
苦しい。
胸がぎゅっと締め付けられるようで、息がしにくい。
「宏……ごめん」
「話しかけないで」
「……っ」
我慢しろ、ここは外だ。
それなのに泣くなんて、ダサすぎる。
それに宏も迷惑がるに違いない。
ぎゅっと自分の手を握り、俯く。
宏はそれだけ言ったきり、黙り込んでしまった。
今日は歩くのが速い宏。
多分わざとだ。
私はついて行くのに必死で、結局それ以上口を聞いてくれることはなかった。



